Throat cancer & Esophageal cancer
咽頭がん・食道がん
咽頭がん
胃内視鏡検査は、食道・胃・十二指腸の粘膜を観察する検査ですが、内視鏡スコープでは咽頭や喉頭の観察もできます。飲酒や喫煙は、口腔・咽頭・喉頭・食道のがんに共通する危険因子であり、喉から食道の領域全体にがんが多発する領域性発がんが発生することもありますので、当院では胃内視鏡検査の際に咽頭や喉頭の観察も行い、病変の有無を確かめています。
咽頭とは
鼻腔から食道上端までの部分が咽頭で、咽頭の先は食道と気管の一部である喉頭に分かれます。咽頭は、鼻腔に続く上咽頭、口腔と上咽頭に続く中咽頭、その下部の下咽頭に分けられ、下咽頭はさらに梨状陥凹(りじょうかんおう)、輪状後部(りんじょうこうぶ)、咽頭後壁(いんとうこうへき)に分けられます。経口内視鏡では中咽頭がん・下咽頭がん・喉頭がんの診断ができます。経鼻内視鏡ではさらに上咽頭がんの診断も可能です。
症状
早期には自覚症状に乏しく、かなり進行してから症状が現れるケースが多くなっています。早期に発見できたものは胃内視鏡検査を受けた際に偶然発見されたものが大部分を占めます。
咽頭は空気や飲食物の通り道ですが、顔にもかなり近く、耳や目の機能障害が現れることもあるなど、がんができた場所によりさまざまな症状を起こします。また、首のリンパ節への転移によって、首にしこりができ、それによって咽頭がんが発見されることもあります。
上咽頭がん
難聴・耳鳴り、眼球運動障害・視力低下・顔面痛など
中咽頭がん・下咽頭がん
片側の扁桃腺が腫れる、飲み込む際にしみる・つかえる、血痰、口をうまく開けられない、飲み込むことができないなど
喉頭がん
声枯れ、血痰、呼吸困難など
検査
内視鏡の機能や観察技術が進歩したことで、咽頭がん・喉頭がんの早期発見が可能になってきています。特に胃内視鏡システムは特殊光や拡大、画像処理などを用いた精緻な観察ができるようになってきているため、微細な早期がんや前がん病変の発見も可能になっています。当院の院長は消化器病専門医・消化器内視鏡専門医であり、内視鏡検査を2万件以上経験し、がんの早期発見に関して特別な研鑽を積んできているため、緻密な検査を短時間に行うことができます。
内視鏡検査の際には疑わしい部分の組織を採取できるため、回収した組織の病理検査によって確定診断が可能です。がんと診断された場合には、腫瘍の拡がりや進展範囲、リンパ節転移の有無などを調べるためにCT検査、MRI検査、超音波検査などを行います。進行度は、早期がんの第Ⅰ期・Ⅱ期、進行がんの第Ⅲ期・Ⅳ期に分けられ、さらにがんの大きさ、頸部リンパ節転移の大きさと数、転移の有無などによって病期が分かれます。
下咽頭がんの早期発見のために
下咽頭は飲食物が喉頭から気管に入ることなく、きちんと食道に運ばれるよう働く重要な役割を持っているため、治療ではその機能をできるだけ残すことが重要になります。ただし、進行しないと自覚症状が現れにくいため、発見された時にはすでに進行していて機能を温存できないケースが多くなっています。予後が悪いとされてきた下咽頭がんですが、早期発見によって機能を温存した治療が可能なケースも増えてきています。また摘出手術を行った場合にも、移植による再建で機能の温存ができるようになってきています。当院では微細ながんの発見になれた院長が丁寧な検査を行っていますので、飲酒や喫煙習慣があって咽頭がん発症リスクが高い方には、無症状の段階での内視鏡検査をおすすめしています。
咽頭がんの治療
一部にのみがんがある状態で、リンパ節転移のリスクがないと考えられる場合には、内視鏡による治療や放射線治療が行われます。それ以外の場合には、耳鼻科や頭頸科の手術や放射線治療、化学療法などを必要に応じて組み合わせて治療を行っていきます。
食道がん
食道は消化管の一部で、喉から入ってきた飲食物を胃に送り届ける役割を担っています。食道がんの半分は食道中央周辺に発生し、その次に多いのは下部です。食道がんは、扁平上皮がんと腺がんの2種類に大きく分けられますが、日本人では圧倒的に扁平上皮がんが多くなっています。扁平上皮は口腔から咽頭、食道までつながっていて、この領域にがんが多発することもあります。扁平上皮がんは飲酒や喫煙が危険因子であり、アセトアルデヒドの分解酵素の活性が弱くお酒を飲むと顔が赤くなる方はリスクが高いことがわかっています。また、熱いものを飲食することも発症リスクを高めることがわかっています。一方、腺がんは食道の炎症を長期間繰り返すと発症リスクが上昇します。日本では食道がんの腺がんは少なかったのですが、食の欧米化などによって近年は増加傾向にあるとされています。
食道がんは造影剤によるX線検査では早期発見ができません。口腔から咽頭、食道までの領域にがんが多発することがありますし、胃がんを合併することも少なくないため、習慣的な飲酒や喫煙をされる方、慢性的な逆流性食道炎がある方は、無症状の場合も定期的な胃内視鏡検査をおすすめします。
症状
早期には自覚症状に乏しく、進行してから発見されることが多くなっています。早期発見は、ほとんどが検診などで受けた内視鏡検査で偶然発見されています。食道は粘膜が薄く転移を起こしやすいため、早期発見が重要です。
食道がんの主な症状
- 飲食の際に胸がチクチクする
- 飲み込む際にしみる
- 飲み込む際につかえる
- 体重減少
- 胸や背中の痛み
- 咳
- 声枯れ など
検査
胃内視鏡検査で食道の粘膜を直接観察します。当院では、特殊光や画像処理、拡大機能などを備えた最新鋭の内視鏡システムを導入しています。また、当院の院長は外科医として数多くの食道がんを診てきており、消化器内視鏡専門医としても内視鏡検査を2万件以上経験しております。がんの早期発見に関しても熟練しているため、短時間の検査でも精度の高いスクリーニングが可能です。内視鏡検査では、疑わしい部分の組織を採取できるため、病理検査で確定診断が可能です。なお、食道がんは、がんの深さとリンパ節転移によって、ステージ0からⅣbまでの病気に分けられます。
治療
日本食道学会が定めた食道がんの診断・治療ガイドラインに従った治療を行っていきます。粘膜内にがんがとどまっていて、リンパ節転移を起こしていない場合には、内視鏡による治療が適しています。ただし、内視鏡手術で回収した組織の検査結果によっては、外科手術や化学療法、放射線治療を追加することもあります。病変の大きさが広範な場合には、内視鏡治療が困難になるため、外科手術や化学療法、放射線治療を行います。がんが粘膜下層にとどまっている場合、手術と化学放射線療法の長期成績はほとんど同等だとされていますので、状態に合わせた治療内容を選択します。がんが筋層よりも深い部分まであって外科手術が可能な場合には、先に化学療法を行ってから外科手術をするケースもあります。また、化学療法、放射線治療だけを行うこともあります。外科手術ができない場合には、化学療法、放射線治療に加え、症状緩和と副作用などを抑える支持療法を行います。