感染性腸炎
概要
急性の腸炎は、ほとんどが細菌・ウイルス・寄生虫などの病原微生物によって起こります。ただし、薬剤やアレルギー、動脈硬化などで急性腸炎になることもありますので、鑑別と適切な治療を受ける必要があります。また、慢性腸炎にも腸結核やアメーバ赤痢など感染性のものがあります。細菌によるものの場合は培養で原因を特定できる場合もありますが、ウイルスによるものは原因を特定できないため、症状や流行状況などを総合的に判断して診断しています。
原因
病原性微生物による感染性腸炎は、細菌性食中毒とウイルス性腸炎が多く、細菌やウイルスが腸粘膜に感染するものと、細菌が作り出す毒素によって症状を起こすものに分けられます。主な症状は腹痛や下痢ですが、血便、発熱、吐き気・嘔吐、食欲不振などの症状を起こすことがあり、経過や症状などによってある程度は原因を絞れます。
まれですが、コレラ、赤痢、腸チフス・パラチフスになった場合には、迅速な届出や指定医療機関による治療、二次感染予防が義務付けられます。
症状
細菌性腸炎
代表的なものに、サルモネラ、カンピロバクター、腸炎ビブリオ、黄色ブドウ球菌、腸管出血性大腸菌などがあります。
サルモネラ
鶏卵や食肉によって感染します。潜伏期間は8~48時間で、吐き気、腹痛、下痢を起こします。
カンピロバクター
主に鶏肉から感染します。潜伏期間は1~7日間と比較的長いのが特徴です。最初、かぜのような症状が現れます。
腸炎ビブリオ
主に魚介類から感染し、潜伏期間は10~18時間です。激しい腹痛や発熱、下痢などを起こします。
ブドウ球菌
さまざまな食品から感染します。ブドウ球菌が作り出す毒素によって吐き気や嘔吐、下痢などの症状を起こします。潜伏期間は1~5時間程度です。
O-157
腸管出血性大腸菌の1種で、ベロ毒素を産生します。下痢、血便を起こしますが、溶血性尿毒症症候群になると急性腎障害や溶血性貧血などを起こすこともあります。経口感染だけでなく二次感染も起こすため、注意が必要な感染症です。
ウイルス性腸炎
エンテロウイルス、腸管アデノウイルス、ノロウイルスなどによるものが多く、乳幼児ではロタウイルスに注意が必要です。空気が乾燥した冬に流行することが多く、「お腹のかぜ」と呼ばれることもあります。
治療と予防
下痢の症状がある場合は、原因にかかわらず脱水を起こさないように水分補給をすることが不可欠です。特に高齢者や乳幼児は脱水が進行しやすいので早めに受診するようにしてください。下痢がひどくなければ経口補水液などで水分補給が可能ですが、脱水を起こす可能性がある場合や嘔吐などにより口から十分な水分を摂取できない場合は速やかに点滴が必要です。
なお、感染性腸炎の疑いがある場合、下痢止めを自己判断で服用すると毒素や病原体の排出が妨げられて症状を悪化させる可能性があります。また、腸管出血性大腸菌感染は、抗生物質の投与によって重症化することがあります。
予防は、こまめな手洗いと、食品の管理が重要です。生の肉や魚を調理したら、その都度調理器具と手を必ず洗ってください。また、肉や魚は常温に放置しないよう心がけましょう。
また下痢をしているご家族がいる場合、食器などを共有しないよう注意し、使用後のトイレの消毒、吐いたものなどの処理には気を付けるようにしてください。